2012年 第15回 木材活用コンクール|受賞作品


審査総評

第15回木材活用コンクール 審査委員長 深尾 精一

木材活用コンクールの狙いは、誰もが参考にできる「木の良さを活かした作品」を選び出すことにあります。したがって審査では、選びだされた作品が手本となり、木材の新しい用途の普及と木材利用の拡大に貢献するという効果・効用を重視しています。また、本年は「豊かさにつながる木材利用」という新たな視点を取り入れて審査を行いました。

今回は、最優秀賞が農林水産大臣賞となったこともあり、全体で232作品という多数の応募がありました。各部門ともバランス良く作品が寄せられたことも本年の特徴といえるでしょう。

第1部門には、優れた作品が数多く寄せられ、選にもれたものでも10年前であれば選ばれたに違いないという建築作品が多数ありました。大規模な一般建築への木材使用がかなり浸透してきたといえます。
それに対し第2部門は、都市部における建築物への木材利用を考えた時に、更なる活用が期待される領域であり、今後、さらに良い活用の事例が出てきてほしい部門です。
第3部門は、住宅という、私達の暮らしにかかわる身近な領域であり、最も多くの作品の応募がありました。しかし、第1部門に比べると、近年の変化・発展があまり感じられませんでした。もっと斬新な木材の使われ方がされた、意欲的な作品の応募を期待したいところです。
第4部門は、多様な作品が寄せられましたが、多くの人が訪れる公開された場において、見たり触れたりすることで、木の良さを体験できるかどうかを重視して選考しました。
木製品を対象とした第5部門は新設された部門ですが、多くの応募がありました。優れた工芸品的な作品の応募もありましたが、木材の活用というコンクールの趣旨から、木材の新しい活用の仕組みやアイデアが十分に示されているかどうかを重視して審査を行いました。

多数の作品に応募いただいたため、審査は例年以上に長時間にわたりましたが、厳正なる審査な結果、22作品を入賞作品として選びました。木の良さを活かした作品を幅広く選考することが出来たと考えております。また、震災復興に関連した作品に「震災復興特別賞」を、継続的なプロジェクトして評価できる作品に「木育活動特別賞」を贈ることとしました。

最優秀賞

農林水産大臣賞

津別町多目的活動センター さんさん館

株式会社アトリエアク

構造材、羽柄材、内外装材、建具材、家具類、サインに至るまで、地元産材及び地元工場製品である針葉樹合板を使用し、家具類の製作もすべて地元の加工場で行われており、材料、加工、建設にいたるまでの明確な流れが読み取れる建築である。木材を活用した建築として、今までになかった完成度を持つ作品といえよう。また、地域のつながりやまちづくりの想いが感じ取れるという意味でも評価された。

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優秀賞

林野庁長官賞

東部地域振興ふれあい拠点施設

安田 俊也、原田 聡、大塚 直、塩手 博道、丸谷 周平、落合 徹、

北田 祐一、石神 哲史、松村 佳明、根岸 雄児、岩﨑 正泰

(株式会社山下設計)

大規模な木造の柱梁に鉛直力のみを負担させ、鋼製フレームにLVLを入れた耐震パネルを外周部と吹き抜け部分に市松状に配置させることによって、水平力に抵抗させている。鉛直荷重を負担しない耐震パネルは、耐火被覆が不要となり、木材を活かした建築となっている。室内から見え、直接触れられることで木材の温かみが感じられ、また、外観の特徴にもなっている。都市部の公共建築として、大規模木造のひとつの形を示したことが評価できる。

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<詳細資料> 東部地域振興ふれあい拠点施設
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(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞

水口幼稚園 木製アスレチック遊具「冒険の森」

池田 保 (ウッドクラフト池田)

心身ともに成長する時期の幼稚園生活において、子どもの冒険心、挑戦心、そして、わくわく感を刺激するような大型木製遊具である。子供たちにとって、木に触れ、木の良さを体感することは貴重な体験となるであろう。

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(一般社)全国木材組合連合会会長賞

知床高架木道

札幌齋藤木材株式会社

これだけの量の木材を屋外で使用した例として、この木材の活用は評価しなくてはならない。景観を損なわずに、世界遺産の雄大な景観にとけ込む高架道の材料として「北海道産材」を利用した点も好感がもてる。

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(一般社)日本インテリアプランナー協会賞

 

花内屋

 

吉村 理 (吉村理建築設計事務所)

民家本来の古い材を蘇らせ、新たな地場材を加えて若い世代が暮すために生まれ変わった民家の空間。デザインされ蘇生した生活空間には“昔への郷愁”や“古材への媚”は見えない。むしろ、新鮮で生き生きとしたダイナミックな生活空間が出現した。そして、将来のコンバージョンを考慮し、仕上げの細部処理まで再生可能性を追求する設計者の理念は、本来の民家の理念に通じるものがある。奥深さを秘めている民家の空間を、見事に現代のインテリア空間に蘇えらせた傑作といえる。

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<詳細資料>花内屋
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日本木材青壮年団体連合会会長賞

「Cool Wood Japan賞」 

下高井戸の家

田村 健太郎+中谷 隆弘+山中 信悟

(株)タマケン+エヌエヌスタジオ+(株)悟工房

あらわしの構造材、床、天井等の内装、窓廻りから外壁に至るまで、木材をふんだんに取り入れた現代的な都市型住宅である。梁の架け方、床材の仕上げを工夫し、開口部に巾1,820mmの木製引込戸を使用することで、内部空間を外部空間のウッドデッキと一体的な繋がりのある空間として作り出している。

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<詳細資料>下高井戸の家
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部門賞

第1部門賞(木造及び混構造建築)

田村材木店天然乾燥施設

 

 

 

石川 大悟 (有限会社モード設計事務所)

材木店が木材を天然乾燥させるための施設として、地場産の木材を多用した木造を用いたことに意義がある。杉の無等級材を用い、柱材に4.0寸部材、梁トラス材に3.5寸部材という2種類の材のみで構成し、長さも3m~6mの一般的な流通サイズとしたところに工夫がみられる。

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第2部門賞(木質空間)

うちとそとをつなぐ木格子

原田 靖之・藤井 誠

(フィールドフォー・デザインオフィス)

木村 敏夫・鳥山 亜紀・大森 奈津子

(清水建設株式会社医療福祉施設設計部)

都心にある産科クリニックの、道路に面した各階の公共スペースに使用した、日本の伝統的な建築様式の「格子」である。都市における木材使用の好例である。

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第3部門賞(一般住宅)

堀切の二世帯住宅

山田 卓矢+石田 潤(リンク建築設計工房)

中田 琢史(リズムデザイン)

上下に重なる階段を各階に2つ設けることで、完全分離された2世帯住宅をシンプルに実現している。階段の両側の柱を24mm厚の構造用合板で挟み込むことで構造体として利用しており、またそれが、インテリアの特徴的なアクセントになっている。

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第5部門賞(プロダクツ・木製品)

THE BENCH

関光 信也 (関光デザイン事務所)

やわらかな針葉樹の木肌を生かしたシンプルで素直な造形。公共用の家具としての強度、機能も充分であろう。写真の姿からだが、触れてみたくなるような風合いの仕上げの試みも評価したい。多くの人が集い、行き来する場所に、ごく当たり前に“木”の家具がもっとあっていいと感じる。

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第4部門賞(ランドスケープ・インスタレーション)

波動-大山岬に立つ遍路小屋-

渡辺 菊眞+松本 達也

高知県建設系教育協議会

直材のみで構成された躍動的な木の架構が目を引く建築物である。建設を学ぶ学生たちの教育には、実際に設計・施工を行うことが一番効果的だという考えのもとに、小学生がイメージし、高校生が図面化した案を、大学生が実施設計し、最後に高校生が施工したもので、その一連の流れが高く評価できる。

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その他の受賞

震災復興特別賞

合掌の家

上野 英二

(オークヴィレッジ木造建築研究所)

木育活動特別賞

赤ちゃん木育ひろば

株式会社内田洋行

テクニカルデザインセンター


木材活用特別賞

棲 Sumika

市橋 正崇

日本大学芸術学部

デザイン学科建築デザインコース

木材活用特別賞

Soup Stock Tokyo ルクア大阪店

 

松本 照久、鈴木 修、平野 大

株式会社リックデザイン


木材活用特別賞

「自然共生の心と技」で建てる

1%の家づくり

後藤 道雄

社会的企業じねん(自然)組一級建築士事務所

木材活用特別賞

如雨露~季節を感じる住宅~

 

鈴木 祥司

アトリエ祥建築設計


木材活用特別賞

RCSW

六車 誠二

六車誠二建築設計事務所

木材活用特別賞

西之谷の住宅|kigi

原田 一朗

ハラダデザインアーキテクチュアスタジオ


木材活用特別賞

BIO MIMIC LOVE

 

武蔵野大学伊藤泰彦研究室+稲山 正弘

木材活用特別賞

中空パネル

川添 恵一郎

有限会社サンケイ


木材活用特別賞

木製デジタルサイネージジャケット

「Lxwall Jacket W-001」

南木 徹+亀山 勝義+朝日 孝+伊藤 清+福田 裕昭

マジケ合資会社+常盤産業株式会社