「正しい姿勢で」
偶然に過ぎないかもしれませんが、人生において起こり得る様々な出来事に「意味」を見出さなくてはなりません。この出来事は、自身に何を教えてくれようとしているのか何を学べという声なのか、そう考えることにより、かけがえの無い一つの人生を深い意味に満ちた人生にすることが可能になります。たとえ困難な出来事が与えられたとしても、「意味」を深く見つめることにより、正対し受け入れそれに果敢に挑み、前に向かって歩みを進めることが出来ます。「意味」を見出すと、必ず自身の心の中に、「物語」が出来、心を励まし、癒し、生きる力を与える自身だけの「物語」をいくつも紡ぎだすことにより、前に向かって大きな歩みを進めることが可能になります。
『先施(せんし)の心』
先施とは、自身から先に行うということであります。相手からの働きかけを待つのではなく、自身の方から相手に働きかけていく心持ちが大切だということです。自身から進んで働きかけることによって、相手の心を動かすことが出来ます。
この言葉は、細井平洲(ほそいへいしゅう)が米沢藩主・上杉鷹山に説いた言葉であります。
・自身が人にして欲しいと思うことは、まず自身が先にする
・自身が人に好かれたいなら、まず自身が相手を好きになる
・自身が人に尊敬されたいなら、まず自身が相手を尊敬する
相手を思いやる気持ちがなければ、どんなことも実践できません。常に相手の立場に立ち考えて意見を言い、相手の都合を考えて行動することで、相手もまた自身を思いやってくれるようになります。先施の心があるところには、必ず人の和が生まれ、人をひととして敬い、譲り合う生き方を徹底すれば、「つながり」のある社会となり結果、栄えるという理念であります。
しかし、物事を進めようとすれば、いろいろな意見が出て議論は百出します。批判や中傷することは非常に簡単ではありますが、解決には至りません。当然、批判の声も非難や中傷も出るかもしれません。恐れたり、躊躇すれば物事はそれ以上には進まないものです。問題解決のプロセスには、責任は俺が取るというリーダーがいなければ解決には至りません。地域の若き木材人そしてリーダーとして、「先施の心」で地域や業界の問題点を探求しながら、問題を抽出し「意味」を考え議論し、愚直に取り組まなければなりません。
『リブランデイング』
創成期の木青連しかない時代から、時代背景も変わりました。変革のスピードも速い現在は、当業界も例外ではなく多くの諸団体が活動する時代となりました。諸先輩方がその時代に合った地域に根差した活動を展開され、70年間連綿と全国で多くの活動と共に、我々の必要性を発信されてきました。今一度、原点に立ち返り、社会から求められる身の丈にあった運動・活動とは何かを考え、推進しなければなりません。行政・地域・他団体に「見える化」し、魅せる運動を発信し、木青連しかかできない運動を探求する必要があります。魅せる運動をすることにより、今まで以上に業界・地域から賛同いただき、協力いただくことで必要とされる団体となります。「見える化」により、若き理解者、協力者が今以上に増えることにより、活動の根幹である会員の増強にも繋がります。業界の中心に立ち、各地域と「つながり」業界に根差した運動を、先施の心で推進していかなければならないのです。
『成長とは』
成長には「職業的成長」「人間的成長」「集団的成長」の3つがある。どうすれば成長できるのか続けることができるのか。誰もが社会に出て職業人としての腕を磨くことから成長の道を歩み始めます。腕を磨くことにより誰もが次の段階「人間」磨くことに向かいます。これが「人間の成長」です。そうして個人として「腕」を磨き「人間」を磨いていくと必ず次ぎの課題に直面します。それが「人間集団としての成長」です。人間集団において互いに成長を支え合い、組織全体で成長していくことが極めて大切な課題となります。「人間集団」の成長を促すためには、その場に「成長の場」を生み出すことにより初めて成長が始まります。人間集団の中心にいるリーダーが成長続けること、そして成長したいと願い続けるとき、そこには自然と「成長の場」が生まれます。
『プロモーションと自身の使命』
行動に起こして行く時に、必要となるのは志を同じくしたメンバーであります。地域の自立や業界の発展、自己の研鑚について議論を尽くし、同じ方向に歩みを進めることにより友情が深まり、その繰り返しが強固な「つながり」を創出します。会員数は運動の原動力や推進力であり、木青連の存在価値でもあります。組織は、人数や構成会議体のバランスによって劇的に変容を遂げることが出来、会員自体が自身の素質を高めることで当会の魅力はさらに高まり、会員拡大に繋がります。会員数の増強で「つながり」をさらに強固にすることにより、当会の価値を今まで以上に各地域に発信出来ます。魅力を、伝播することが一番の会員拡大に繋がると確信し、自身の使命を感じ魅力ある姿を魅せ、メンバーが一体となり真摯に会員拡大に取り組む必要があります。
『感性価値の創造』
日本の経済を牽引し、世界にその地位を築いてきた自動車・家電さえも、時代の変革によりその立場は大きく変化してきています。日本のものづくりは、これまで高性能で信頼性が高い製品をいかに安く作るかに注力してきました。近年、価格対機能や性能といった評価軸では、他国のほうが強みを持ち始めてきました。「機能性」・「信頼性」・「価格」に続く4番の価値軸の感性価値の創造が必要であると考えます。
感動と共感を与えることで得られる経済価値であり、良い商品には作り手側にメッセージ性の強い物語があり、使い手側に何らかの感動や共感が生まれることが特徴です。感性に働きかけ、共感を得ることによって初めて顕在化(けんざいか)する価値であって、これからのものづくりのキーワードとして注目すべきではないかと考えます。感性価値を知ってもらう・感じてもらう為には、人の持つ創造性が発揮されることが不可欠です。それゆえに、創造性の豊かな人材の開発・育成を兼ね備えた組織作りは必須であります。人は認められ、必要とされることにより、やる気を伸ばし、更なる力を発揮します。お互いに響き合い共同で作り上げる共創という概念で、感性価値の創造の好循環が形成された時、新たな運動が創出し、「感性価値」が業界を牽引する新たなイノベーションと成長の推進力となり得ると考えます。「感性価値」こそが、地域の雇用と経済活動の根幹を支える企業の経営者であるメンバーの成長と、業界の未来を切り拓く一筋の光明となり得ます。
『スタートアップ社会の構築』
誰もが責任を取らず国民は絶望感すら政治・国家そして行政に抱いているかもしれません。近代国家の最低限といえる義務である、国民の財産と生命をも守ることのできない国家となってきています。近年は、経済社会が成熟するにつれ、個人の価値観は多様化し、行政の一元的判断に基づく上からの公益の実施では、社会のニーズが満たされなくなってきました。企業活動には社会的責任があり、何か出来る小さな運動を一人ひとりがどんな形であれ、行動で示さなければなりません。寄付や補助金だけでは、支援や活動には限界があり、事業も継続できません。会社の規模にとらわれずに社会的責任を意識し、どのように貢献できるか考え企業を運営していかなければならない時代であり、自己の利潤を追求するだけの企業経営では企業の価値が高まらないと考えます。
民間の力を活用し、社会が抱える問題の解決に一歩踏み出し、まず身近な問題に取り組み変化を起こす人材・環境の創出が求められ今まで以上の連係が必要です。一人ひとりが社会的責任を実践する企業・団体が地域に増え、企業・団体と産・学・官が連携し、地域の問題に取り組む必要があります。ネットワークや人材が業界の未来を担う「見えない資産」であり、必ずや変革を起す原動力となり得ます。
『グローアップ』
「知識のコミュニティ」の醸成が必要であり。若き地域の木材人の「知識のコミュニティ」が経験と実践を重ねることにより、知見とノウハウが蓄積することにより、議論と経験と知見と志が生まれ、自立します。知見を広げるためには、視座を広げる必要があります。国内の先進的な企業や、熱量の高い海外に知見を広げることが自身の今後の知識の礎となりえます。自立には、志・意志・覚悟が必要であります。業界の繁栄にこそ自らの幸せがあることを自覚した若い力が、活性化に真摯に向き合い、業界の主人公にふさわしい義務を果たすことにより、最良の変化を起こします。次世代のための新しい時代を築き上げる、未来に誇れるメンバーの人材を創出します。
『「人間力」の自覚と持続可能な社会』
昔から、働くとは「傍」を「楽」にすることという説があります。この国においては働くとは自分以外の誰かを楽にすることであり、自分以外の誰かを幸せにすることと長く語り継がれていました。仕事という言葉も同様で「仕(つか)える事」であり、誰かを幸せにするために心を込めて仕える事を意味しています。日本という国において長らく伝えられてきた思想が、近代の欧米の拝金主義により皆無となりつつあります。
「CSR」企業の社会的責任という言葉で近年多くの大企業でも取り入れられています。人類は生物多様性がもたらす恵みを享受することにより初めて生存可能であり、人類存続の基盤となっていますが、人間活動や気候の変動の影響で地球環境は深刻な危機に直面し、地球には限りあることに多くの人々が気付き始めています。人間活動が地球環境の許容範囲を超えた今、あらゆることを見直し考えなくてはならない時期であります。その為に多くの情報を得て、学ぶことが必要となり、想像力や感性価値も必要であります。メンバーが自立し、自然・次世代・他の地域などとの関連性を持ち、多様な豊かさを実感できる団体でなければなりません。「SR」を日本人の感性に置き換えると「心配り」という言葉に置き換えられるかもしれません。どのような問題も一朝一夕では解決できるものではなく、無理せず、誰かの為に自身の出来うることを考える「心配り」が必要なのです。個人が「SR」を果たせる環境を作り出すには、社会で起きていることついて探求し、解決に向けて行動する為の教育・情報・ネットワークを構築する必要があります。「SR」の概念を共有できれば、当たり前のことを当たり前に出来る「心配り」のある地域・企業となり、誇れる知の資産になります。持続可能な社会の実現に向けて、地域に浸透した概念が「見えない資産」となり、誇れる団体の創出につながります。
『縁の心』
縁(えにし)とは人とひとを結ぶ、人力を超えた不思議な力です。巡り合わせと訳され、古来の日本人はこの言葉の持つ不思議な力を尊んでいました。昨今の日本人には縁という言葉の意味さえ知らず、ましてや人とひとの縁を大切にするという感覚さえも忘れてしまった社会になりつつあります。人とひとの関わり合い、ものごとの関わり合い、そして関係性の強さなど、そのめぐり合わせに意味を持ち、もっと温かく優しい社会を私たちが感じ築かなければなりません。次世代が未来に希望を持てるような社会を築く為に、メンバーとメンバー・会社と会社・会社とメンバー、様々な縁を大事にする人達を創る団体でなければなりません。その為には、自らの縁を今以上に強固にし、共に学び、議論し自己研鑚し推進していく必要があります。木青連の行事は多くの学びと気づきが芽生える場所であり、自身を開発し高めていく喜びも経験することが出来ます。その為には、心の琴線(きんせん)に触れ、自身を変えてくれる環境に身を置くことが必要であります。各事業に積極的に参加し自身の視野や能力を今以上に高め社業にフィードバックして頂き、全国のメンバーとの多くのかけがえのない縁を創出して頂きたいと考えます。
『結びに』
希望を持ち「未来」を想い描く前に、「過去」を深く省みることが必要です。今だからこそ、ウッドショックの時何を教えられたか、何を感じたから、そこから何を学ぶべきであるかそうした視座から「過去」を深く省み、今なすべき改革をしなければなりません。喉元過ぎれば熱さ忘れるという言葉があるように、今だからこそ行動に起こす時です。
我々は今何をすべきか、この機会にこそ、新たな一歩を踏みだし、生まれ変わらなければならないのです。長く続いた混迷の時代を超えて素晴らしい木材業界を創出しなくてはいけません。だれよりも自身の為であり、今この瞬間、命があって、この時代を生きる、この社会を生きる我々自身の為ではないでしょうか。これからは、どう生きるか、どう行動するかその覚悟と責務が問われています。今の時代を生きる木材人としてその「意味」を考えなければいけない。
私たちを育んでくれた木材業界の発展に向け
自身の豊かな実りある人生を歩む為に
悔いのない人生を歩み
1日1日を慈しみながら歩み
新しい「物語」を紡ぎだしましょう
すべては、我々がいかに行動するかにかかっている
「先施の心で」我々は業界の光明とならんとする
日本木材青壮年団体連合会
令和6年度 会長 甲村 耕三