少子化問題と木材産業の成長
・はじめに
前回、人手不足問題に触れました。何故、人手不足になるかといえば、急速に労働人口が減少しているからでした。労働人口が減少している原因は少子化です。

上記は前回と同じグラフですが、1955年に3012万人だった14歳以下人口が2025年(推計)で1324万人と57%も減っています。人口の数に注目すればこの70年間に東京都よりも多くの若年人口が消滅したことになります。(1688万人>東京都の2025年推計の人口は1426万人)
昔は兄弟が多く一組当たりの子供の数が非常に多かった時代がありました。しかし、これは戦中戦後の特殊な時期であり、その後の夫婦間の子供の数はそんなに減っていないことが下記のグラフからわかります。


出典:Revitalize社調査レポート:少子化の抜本策は中小企業の売上拡大である_2025年1月版.pdf
1970年の103万組→50万組(2022年)と半分以下になっています。
婚姻数を増やす方法は無いのでしょうか?
実は非常に興味深いグラフがあります。それが下記です。

このグラフの様に年収によって大きく婚姻率が変わることがわかります。しかも、年収と婚姻率の関係は正比例に近い状況で相関性が極めて高いのです。
今の20代前半の若い世代に実際に聞いてみても「給与が安くて、とても『娘さんをください』とは言えない。」とか、「結婚式や披露宴の費用、住居の準備、家財道具の購入、など、とても払えないので結婚できない。」という答えがかえってきます。
つまり、これだけ年収と婚姻率の相関性が高いと従業員の年収を引き上げない限り少子化問題は解決しない、と言ってもいいのかもしれません。
日本政府が1994年に初めて少子化問題に乗り出してから30年以上経ち、その間に支出された少子化問題対策費は「累計でナント66兆円!」を超えてしまいます。これ程の国家予算を投入しても効果が見られないのは原因と解決策が合っていなかったともいえるでしょう。

・少子化対策=中堅中小企業の従業員の年収アップ?
少子化対策の為に中堅中小企業の経営者の皆さん、従業員の給与を上げて下さい、ということは簡単ですが、単純にそんなことをすれば会社の継続が困難になってしまいます。
こうした問題に対して昨年からRevitalizeという企業が立ち上がりました。私もアドバイザー、ビジネスプロデューサー、として参画しています。この企業は「中堅中小企業の売上や利益を増やす事」をミッションとしています。
間接的ではありますが、支援した企業の売上や利益が増え、その企業の従業員の年収が上がり、婚姻率が向上し、少子化問題を解決したいというのがRevitalize社の願いです。
・Revitalize社
この企業はマッキンゼー、デロイトトーマツ、などの大手コンサル企業や私が所属していたリクルートグループメンバー中心に設立された企業ですが、役員社員は5名程しかおらず、中堅中小企業支援ができる人材をネットワーク化しているネットワーク型組織を採用しています。
中堅中小企業支援できる人材を「ビジネスプロデューサー」と命名しており、現在、130名程のビジネスプロデューサーネットワークができています。そして、将来的には全世界で1万名のネットワークを構築することを一旦の目標としています。
様々なスキルを保有するビジネスプロデューサーが企業様の案件に応じて適材をプロジェクト編成し、支援させて頂くという形態を取っています。
例えば、下記の様なスキルに対応したビジネスプロデューサーがいます。
① 人材育成
② 組織活性
③ 人材採用(新卒採用、海外人材採用):第一回目にご紹介したフューチャーデザインラボ社の創業会長が一例です。
④ 販路開拓(国内、海外): 3000人の海外バイヤーと繋がっている海外販路開拓スペシャリストが実際にいます。
⑤ DX、AI導入支援
⑥ 資金調達支援
⑦ M&A支援
⑧ 新規事業、新商品開発支援
⑨ ・・・
・木材産業の成長(売上や利益拡大)とRevitalize社
私自身は木材産業(林業)へ身を投じてから12年になりますが、古い産業だからなかなか事業を成長させるのは難しいと思っていました。
しかし、2018年から林業から地方創生に軸足を移し、様々な地方企業を調査し、Revitalize社で様々なビジネスプロデューサーと話してみると意外にも急成長している木材産業企業があることに気が付きました。
(ケース1)例えば、木青連の会員でもあり、私が2021~23年度に林野庁の有識者委員でご一緒させて頂いていた岩手県の柴田産業様はオーストリア林業並の高い素材生産の生産性を出されています。
オーストリアやニュージーランドは日本の様に急峻な山で林業をしていますが、ニュージーランドの場合、年収1000万円以上の林業者はたくさんいるようです。生産性を調べてみると2020年の数字ではありますが、日本の生産性の6.2倍です。(生産性=年間素材生産量/林業従事者)。(これについては別回のコラムで詳述します)
また以前スイスフォレスターの方にお聞きしたところ、スイスの林業者の平均年収は1200万円だそうです。例えば、あるスイスの林業者は3人でハーベスターとフォワーダを購入し、24時間3交代で皆伐しているそうです。
様々な国との比較を行い何が違うのか抽出し、違いを埋める事ができないのか検討すれば生産性向上=利益アップ=従業員の年収アップは可能でしょう。
実はこれは林業に限った話ではなく、漁業の場合もノルウェーの1/20の1人当たり漁獲量、農業の場合もオランダのナスやキュウリの反収は10倍以上の開きがあるのです。(オランダのアルバイト時給は4500円/時だそうです)。これでは日本人の給与水準は上がるはずがありません。国際比較は重要です。
(ケース2)3年程前ですが、林野庁の有識者委員として、宮崎県の南那珂森林組合に訪問させて頂く機会がありました。この森林組合は平成13年に合併後、少しずつ売上を増やし、今では何と5倍になっていて大変驚きました。
当然、何故こんなに売り上げを増やすことに成功したのか?とお聞きしたところ、何か新しい事業が伸びたとか、管理している森林面積が激増したとか、大きな補助金を毎年もらっているとか、いろいろ想像していましたが、全く予想しない回答がかえってきました。
「メンバー一人一人がやりがいや自己実現を感じられるマネジメント」をしているから、という回答でした。
人材育成、組織活性、人材マネジメントは特に私が所属していたリクルートという企業では様々な最先端の取組がされていました。その根本的な思想は従業員一人一人に自己実現感を如何に得てもらえるかということでしたから、全く同じ回答で大変驚きました。
半年に一度の目標設定のすり合わせ:ここではメンバーが現場に一番近い所で何を感じて何をやるべきと考えているのか?という現場からの意志や考えの吸い上げと経営からの経営目標のすり合わせを行い、優先順位や選択と集中をはかり目標設定を上司と部下双方じっくり話し合って決定し明文化します。
私の場合は直属の部下に対しては週に一度は一対一で話し会える場を設定し、部下がどこでつまずいているのか、何がネックで進まないのか、だけを見てアドバイスをしていました。
リクルートを辞めてわかりましたが、これだけ人材マネジメントに時間をかけ、目標をすり合わせて、明文化し、評価し、次の目標設定に活かすというようなことをしている企業は稀有だとわかりました。しかし、こうしたことをやっている森林組合もあるのです。
OECDからも日本企業には人材マネジメントの問題があるのではないか?と指摘を受けている記事を以前、読んだことがあります。人材育成、組織活性、自己実現感の醸成などできていないと若い人は辞めてしまうかもしれません。人材マネジメントはとても重要な事だと思います。
(ケース3)キリが無いので最後にしますが、以前、地元の飛騨市の「広葉樹によるまちづくり」委員会というものに所属していました。広葉樹に関わる全ての事業者の代表者が参加して、地元の森林の70%に当たる天然林にある広葉樹の活用を検討しました。
驚いたことに同じサプライチェーンを構成している企業が集まったのですが、「初めて会いました」とか「他の事業者が何をしているのか具体的には何も知らなかった」という意見が出てました。それだけ近くて遠い存在で、お互いに相談や意見交換もせず、分業していたんだと思い知らされました。
定期的に何度か集まりの場が設定され、お互いの事がわかり、気軽に相談できる間柄に代わっていき、次第に地元の広葉樹活用のアイデアが出始め、直近の5年で地元の広葉樹の利用量は2倍に拡大、休止していた広葉樹の製材所が再稼働し、市内の広葉樹専用製材所は1軒から2軒に倍増しました。
このように成熟産業だから、とか、古い産業だから、と思っていても売上が何倍にもなる例はたくさんあると思います。少子化問題は国の問題ではなく、企業経営者全員の問題(従業員の給与アップが少子化問題解決の一丁目一番地)だと捉えることが重要です。
・企業、団体の皆様へ
従業員の給与を上げてやりたいのだけれども、今の利益水準では無理、とか、事業の今後の成長戦略が描けない、とか、組織の風通しが悪く問題が起きていてもなかなか伝わってこない、とか、新規事業や新商品開発をしたいのだけれどもやる人がいない、とか、新商品を開発したが売り方がわからない、とか、後継ぎがいなくて将来が心配、とか、様々なお悩みがあるかと思います。
Revitalize社はこうした悩み事に対応できる人材ネットワークを保有しており、適した人材によるご支援が可能です。
以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。
宮本義昭:メールアドレス:ym00876216@gmail.com
(過去のコラム)
第一回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大
【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第1回 - 日本木材青壮年団体連合会
(所属企業、団体)
株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長
兼 株式会社KOSO アドバイザー
兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー
兼 株式会社Revitalize アドバイザー
兼 株式会社Dione アドバイザー
東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員
プラチナ構想ネットワーク 法人会員
先進EP研究会 会員
Asagiラボ 賛助会員
東海バイオコミュニティ 法人会員
林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員
東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会
蔵前バイオエネルギー 正会員
(拙著:代表作)
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