【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第17回

エネルギー生産性向上 

 

フローティング電池を活用した電気代削減と事業拡大

はじめに:

いつ終わるかわからないホルムズ海峡封鎖という状況を鑑み、今回もエネルギー関係を取り上げます。

 

木材産業は”自然素材を扱う産業”である一方、今後はエネルギーとの向き合い方も競争力を左右する時代になるかもしれません。製材や乾燥、搬送設備など、木材業界は多くの電力を使用する産業でもあります。電気代の高騰やエネルギー供給不安が続く中、エネルギー生産性向上は経営上の大きなテーマとなっています。

 

フローティング電池、ご存知でしょうか?おそらく多くの人は知らないと思いますし、電池という枠組みの中で区別が付いていない、もしくは、区別を意識させないように売られている為、知らない人が多いでしょう。

 

フローティング電池とは、充電や放電の制御をしなくても、電池が自発的に電圧を一定に保持する電池です。電圧が下がれば放電し、電圧が上がれば充電する電池をフローティング電池といいます。

 

今回はこのフローティング電池を題材に電気代削減のご提案をしたいと思います。

 

フローティング電池の歴史と進化

 皆さんが頻繁に目にされるのは自動車の鉛蓄電池でしょう。既に枯れた技術で安価に手に入ります。電気自動車にも鉛の蓄電池が搭載されている事があり、何故大容量のリチウムイオン電池が搭載されているの?と、不思議に思われた事がある方もいるでしょう。リチウムイオン電池は大容量であるメリットはあるものの、制御システムで充電や放電を指示してやらないと動かないので鉛蓄電池が初動で必要になります。

 

 また、米国では自動車稼働用の電池と補助機能(システムスタート、ドアのロック開閉、・・・)の電池は分けるよう法制度化されている国もありますので、電気自動車であろうが、ガソリン車であろうが鉛蓄電池の様な安価で信頼性が高い電池は必須となります。

 

 次によく見かけるのが家庭で充電できるニッケル水素電池です。通常の充電できる蓄電池という認識しかないですし、フローティングで使うなんて誰も誘導していませんから、単なる蓄電池としか認識が無くても当然でしょう。

 

 そして、30年程前から、このニッケル水素電池の特性を活かした業務用や事業用蓄電池で世界を牽引してきた始まりが川崎重工業のギガセルという大出力ニッケル水素フローティング電池です。

 

 この電池は鉄道の回生電力の充放電や米国海軍の空母の電磁カタパルトに活用されています。

 

 そして、このギガセルを参考に量産化に成功したのが初代プリウスのニッケル水素電池です。ハイブリッド車の回生電力の充放電に使われており、燃費性能を向上させることに活用されています。

 

 こうしてニッケル水素系のフローティング電池では日本は世界をリードする存在であり、現在も健在です。よく日本は中国に電池で負けたといわれていますが、それは大容量蓄電できるリチウムイオン電池の事であり、大出力のニッケル水素電池はまだまだ日本が優勢です。

 

 ギガセルからハイブリッド自動車のニッケル水素電池に進化してきた流れとは別に事業用電池として活用されている流れもあります。

 

 例えば2012年に東大発ベンチャー企業のエクセルギーパワーシステムズはエクセルギー電池を開発し、超大出力電池や電力調整用電池として、アイルランドや英国の電力調整市場で活躍しています。更に今年の5月には三井不動産が建物の電力調整用電池として活用することを想定し、このスタートアップ企業への投資を決めました。

出典:エクセルギーパワーシステムズ社ホームページ(2026511日)

https://exergyworld.com/jp/20260511-1/

 

 更に2019年には堤水素研究所という福島県スタートアップ企業が「プロトン電池やぶさめ」という超々大出力フローティング電池を開発しました。この最新鋭の電池はラボベースではありますが、ギガセルの300倍、エクセルギー電池の30倍もの出力が可能で、最短1.2秒で充電もしくは放電できるというものとなっています。

 

フローティング電池の活用事例

1.クレーン、昇降機、フォークリフト、立体駐車場など回生電力発生機器

 自動車以外では上記の様な機器で回生電力が発生しますが、これにより使用電力料金(kWh単位課金)と最大使用電力料金(kW課金)の双方が削減可能です。

 

 事例1)名古屋港の港湾クレーン(ガントリークレーン)の実験

              ・最大使用電力(契約電力)→28%に(約1/4に低減)

              ・使用電力量→46%に(約半分)

              ・回生電力回収率:95%(リチウムイオン電池は30%)

              *リチウムイオン電池は制御遅延、急激な電圧変化に対応できないことにより

回生電力の回収率が低い。

 

事例2)大手電力会社事業所の立体駐車場の契約電力料金の低減

          ・最大使用電力(契約電力)→10%に(月額3万円→3,000円へ)

 

 

2.断続的に大出力を使用する工場の場合への適用

 例えば、100秒ごとに11.2秒間10MWを出力する圧延機のある工場の場合、100秒間プロトン電池やぶさめで0.1MWでゆっくり充電しておき、100秒に11.2秒で放電すれば、

              ・最大使用電力(契約電力)を1/100にすることが可能

              ・また、圧延機の電池までの電線も1/100の容量にすることで工場内配電線や

電気設備のダウンサイジングが可能となる。

 

つまり、蓄電池でアンプ(電力増幅器)の様な働きをさせることが可能です。逆も可能で急速充電してから、ゆっくり放電することも可能な面白い電池です。

 

 

3.太陽光発電の発電量の増加

 前回、太陽光発電と蓄電池をテーマにコラム掲載しました。あの蓄電池はリチウムイオン電池の大容量電池を想定していました。フローティング電池を組み合わせることで発電量を増やすことが可能となります。

 フローティング電池を組み合わせると何故発電量が増えるのかと申しますと、太陽光発電は雲が突然切れて太陽が直接太陽光パネルに降り注いだり、また、その逆もあり、発電量が急速に減ったり増えたりします。増える場合にはパネルは発電しているのに急速な電圧変化に電池を含めた電子機器は追従できず太陽光パネルの発電を受け止めきれないという現象が発生します。

 フローティング電池はこのような急激な電圧変化にもリアルタイムで追従し、電気を蓄えることが可能となります。したがって、太陽光発電の発電量が増えるのです。

 

 

4.データセンターや工場の瞬低、フリッカー対策

 電気代削減とは関係ありませんが、フローティング電池を設置するだけで瞬停やフリッカー対策になります。これはフローティング電池が電圧を一定に保とうと自律的自動的に反応する為です。

 

 

5.データセンター、工場、病院、非常用発電機起動までの電力供給

 データセンターや工場、病院など社会を支えるインフラ施設には非常用発電機を設置しているところがあるでしょう。ただし、非常用発電機の起動までには数秒~数十秒、時間がかかります。その間のつなぎとして、フローティング電池を使う事で、商用電源から非常用発電起動までの時間の電力供給と安定した電圧での供給が可能となります。

 

 

6.電池で直流電圧の昇圧、降圧が可能に

 トリッキーな電池の使い方になりますが、直流電圧の昇圧や降圧が可能となります。

例えば、480Vの電圧を48Vに下げたいのなら10個のフローティング電池を直列に配置し各電池から48V取り出せれば高価な直流降圧機器は不要で電池だけで降圧が可能です。逆の使い方をすれば昇圧も可能です。

 

 

最新のフローティング電池 「プロトン電池やぶさめ」

 福島県のスタートアップ企業である「プロトン電池やぶさめ」は極めて優れた性能を持っています。

 

・電池寿命が無い(今のところ確認されていない):80万回もの充放電実験を繰り返しても今のところ電池の性能劣化が認められていません。ということは充放電1回当たりのコストは限りなく0円に近いコストで実現できるということになります。

 

・利用可能温度帯域が極めて広い:-40~80℃まで使用可能です。弊社調べではこれだけ広い温度帯域で使用できる蓄電池は現時点では市販されていません。少なくとも日本ではヒーターや冷却装置は不要です。また、高温時の冷却停止運転の様に稼働時間を少なくする運用も不要です。

 

・充放電時間は世界最高性能:ラボベースではありますが、1.2秒で充放電することが確認されています。例えば、工場で使用する場合、特にフォークリフトを電動化した場合、2時間おきの休憩時間10分以内に充電できれば、大容量の電池は不要であり、回生電力を組み合わせればかなりの電気代、燃料代削減となります。

 

Roll to Roll製造と高出力(1kWhの小さな電池で3MWもの出力が可能)によりkW当たりコストは世界最安です。

 

・そもそもフローティング電池なので制御システムも不要で、電池単体というよりは電池システム全体のコストを下げる事が出来ます。

 

 このようにリチウムイオン電池は中国に大きくリードを許され、原材料であるリチウムの鉱山権益、精製においてもリードされてしまいましたが、ニッケルベースのニッケル水素電池でもあるフローティング電池はまだまだ日本はリードしています。

 

 こうした新技術の電池を取り入れることで電気代を削減しつつ、質の良い電力(直流においては電圧一定、交流においては周波数一定)を使う事で電子機器の寿命を延ばし、制御システム、ヒーター、冷却装置、などの旧来の電子機器を削減することでコスト削減を実現することができます。

 

フローティング電池を活用した事業拡大

 ここまでみてきたようにフローティング電池は様々な場面に使えそうです。特に個人住宅や商用施設建物、工場、データセンター、病院などには使える場面が多いでしょう。

 

 これもあまり知られていませんが、非常用発電機のあるデータセンター、工場、病院には電池は無く、非常用発電機起動までの停電はあきらめている施設が意外に多いと聞いています。

 

確かに滅多に停電しない商用電力に対して非常用発電機だけでなく蓄電池まで整備するのは過剰投資に思われがちです。しかも、蓄電池の価格が大幅に下がったのは、直近の10年程前からで、逆にいえば、10年前の蓄電池は10倍以上も価格が高かったそうです。

 

 プロトン電池やぶさめなら、kWコストは世界最安、通常は瞬停やフリッカー対策で使っておいて、商用電源の停電の場合には非常用発電起動までのツナギ役をやってもらったらよいと思います。

 

 自社で試し、クライアント企業や見込み客に提案していくことでビジネスを拡大できないでしょうか?

 

 

最後に:

 

今回はあまり知られていないですが重要な技術であるフローティング電池に関してご紹介させて頂きました。特に最新のフローティング電池である「プロトン電池やぶさめ」は素晴らしい技術であり、私が応援しているスタートアップ企業の中で最も優れており、潜在市場も大きく、将来性が高い技術だと思います。

 

お金儲けだけ考えれば、米国や中国の企業と組んで展開することは簡単でしょうが、この電池の発明者は日本にこだわっており、実際に中国や米国、他にもイスラエルやアルメニア、など多くの国からもオファーがあるのに断っています。

 

日本の多くの企業で活用され、エネルギー生産性を向上させ、日本全体の産業への貢献ができたらよいと思います。

 

 

以上、ご関心あれば下記までご連絡下さい。企業や団体の紹介も可能です。

宮本義昭:メールアドレス:[email protected]

 

(過去のコラム)

1回:人手不足対策、地域の空き家問題対策、リフォーム事業拡大

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14回:生産性向上~機械学習データ作成:Nextemer

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15回:生産性向上~スリープテック:株式会社ACCELStars(アクセルスターズ)

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16回:エネルギー生産性向上と事業拡大 太陽光発電と蓄電池

【宮本義昭氏コラム】木材産業を成長産業へ! 第16回 - 日本木材青壮年団体連合会

 

(所属企業、団体)

株式会社バルステクノロジー 代表取締役社長

兼 株式会社KOSO アドバイザー

兼 日本木材青壮年団体連合会 広報委員会アドバイザー

兼 株式会社Revitalize アドバイザー

兼 株式会社Dione アドバイザー

東京科学大学(旧東京工業大学)基金特別会員

東京科学大学(旧東京工業大学)起業創業コミュニティ

プラチナ構想ネットワーク 法人会員
先進EP研究会 会員
Asagi
ラボ 賛助会員

東海バイオコミュニティ 法人会員

林野庁 森ハブ・プラットフォーム会員

東京丸の内イノベーションプラットフォーム林業分科会

蔵前バイオエネルギー 正会員

ソーラーシェアリング推進連盟 一般会員

 

(拙著:代表作)

 

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