2013年 第16回 木材活用コンクール|受賞作品


審査総評

第16回木材活用コンクール 審査委員長 深尾 精一

木材活用コンクールの狙いは、誰もが参考にできる「木の良さを活かした作品」を選び出すことにあります。また、選び出された作品が手本となり、木材の新しい用途の普及と木材の利用拡大に貢献するという効果・効用を重視しています。今回は、昨年と比べて応募総数が下回った事については残念でしたが、意欲的に木材が活用された作品や、特殊で面白さを感じる作品も目立ち、コンクールの趣旨に合致した優秀な作品を選び出すことができました。

 

 第1部門に該当する、木造及び混構造建築物と第2部門の木質空間では、木造(木質)で大空間を実現した、従来の感覚にとらわれない斬新な設計がなされた作品が印象に残りました。また、間伐材や端材を上手く活用することを目指してデザインされた作品や、街づくりの一環として景観を木質に改修するといった、木材の普及に貢献する作品もありました。最優秀賞を始め、受賞作品はこの2つの部門から多く選出されました。

 

 第3部門の一般住宅では、今年の作品には、全体的にはあまり目新しさはありませんでしたが、中には、一見、住宅には見えない面白さや不思議さを感じる作品も応募されており、住宅の新しいカタチを見る事ができました。また、地産地消に取り組む作品も、多数の応募がありました。

 

第4部門のランドスケープ・インスタレーションと第5部門の木製品は、応募数が少なく残念でしたが、地域材を都市部で積極的に活用する取り組みや、発想がユニークなマーケットに合った作品もあり、これからの木材普及の可能性を感じました。

 

5部門全体の中から、厳選な審査の結果、農林水産大臣賞を始め18作品を入賞作品としました。今回も、木材活用コンクールらしさが発揮された作品を選び出すことができたと感じでおります。今後、この受賞作品を広く発信することが木材需要の拡大に繋がる事を願い、また、更なる当コンクールの発展を期待しております。

最優秀賞

農林水産大臣賞

筑紫保育園 分園

内田 貴久(内田貴久建築設計事務所)

木造のトラス梁によって構成した折板状の屋根によって、9mスパンの無柱空間を実現している。大規模構造物でありながら、分節化された空間の造り方が巧みであり、将来の様々な状況変化にも対応も可能である。また、内装の木質化によって、柔らかさや温かさを感じる保育園となっている。

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優秀賞

林野庁長官賞

尾鷲市立 尾鷲小学校

伊藤 恭行、佐々木 司 (株式会社 シーラカンスアンドアソシエイツ/Can)

細い柱の鉄骨造に地域材である尾鷲ヒノキを活用し、木質空間を巧みに創りあげている。木材活用の見本になる作品と言える。地域の森林組合などと一体となった木材活用の取組みは、これからの活動に期待と希望が持てる。また、光の取り入れ方や、鉄骨柱とログによる壁の組み合わせも効果的である。

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<詳細資料> 尾鷲市立 尾鷲小学校 伊藤 恭行、佐々木 司
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(公財)日本住宅・木材技術センター理事長賞

宮田村こうめ保育園+東保育園改修

須永 次郎、須永 理葉、吉岡 寛之、浜田 充

(暮らしと建築社+iroirotoridori)

小断面の部材による木造格子梁を用いて、軽い屋根構造の無柱空間を実現している。ヒノキの需要低迷の中で活用が望まれているヒノキ合板がバランスよく使用されおり、意欲的な木材活用と言える。温かみのある美しい空間が実現された作品である。

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(一般社)全国木材組合連合会会長賞

富岡八幡宮 仮設観覧所・休憩所

水野 吉樹、秋山 裕子

(株式会社 竹中工務店)

例大祭の期間だけに用いるために建てられた、仮設の木造御観覧所を再利用した作品である。木材の特徴を活かすことによってこそ可能となった特殊な事例として評価された。関係者の記憶や想いが、この休憩場に今もなお残されている。

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(一般社)日本インテリアプランナー協会賞

アワーズイン阪急 OURS IN HANKYU

西尾 敏靖、鈴木 雅子、高橋 真悟

(株式会社 240design studio)

 

ホテルのパブリックスペースで、ここまで木材を使用した例はみられない。壁・床材などに、環境に配慮された計画伐採による集成材や間伐材、耳付き・皮付きの端材等を利用している。緑も取り入れ自然素材を大切にして作られた空間が評価された。

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日本木材青壮年団体連合会会長賞

「ブレイク・スルー賞」 

バウンダリー・ハウス

山下 保博、名和 研二 (構造設計室なわけんジム

一級建築士事務所 株式会社 アトリエ・天工人)

特殊な敷地条件の中で、「自然と建築の境界の曖昧さ」を目指した、まさにブレイスルーな作品である。構造材としての木材の活用の仕方も斬新であり、意欲的な構法開発がなされている。まるで迷路のような平面構成の設計は、豊かな発想を実現しており面白い。

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<詳細資料>バウンダリー・ハウス
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部門賞

第1部門賞

美濃保育園 子育て支援棟

二宮 郁代

(株式会社 象設計集団)

枝の付いた自然丸太の柱が建物を支えており、森の様な内部空間を表現した屋根架構の斬新な作品である。地域の技術・材料を活かし、子供達が木を身近に感じながら生活できる空間となっている。

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第2部門賞

ゆいま~る那須

瀬戸 健似、近藤 創順

(株式会社プラスニューオフィス)

有機的な配置によって豊な外部空間を生み出しているコミュニティー形成の面白さが評価された。構造材、床材、外装材などには、地場の杉材を無垢のまま使用し、木の優しさが溢れる場所となっている。

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第3部門賞

百済寺の家

関谷 昌人

(PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ)

一見、住宅に見えないような斬新な建築であるが、敷地形状を上手く利用し、雨水利用と環境との調和を目指した設計が評価された。建物内にも外部空間を巧みに取り入れている。

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第5部門賞

記憶の波紋 -伐採木利用家具による地歴の継承-

土屋 潔、大庭 拓也

(株式会社日建設計)

外来生物という理由があって伐採された敷地内の樹木を、家具として利用した作品。木口を組合せた座面は、年輪が水の波紋のように広がり、木の温かさや学園の記憶が表現されている。

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第4部門賞

錦二丁目ストリート・ウッドデッキ

都市の木質化プロジェクト

 

県産材の積極的な活用方法として、都市部の公共空間などにウッドデッキを設置し、木質化を推進している取組みが評価された。街の中での木質空間は、人々の憩いの場として活用されるであろう。

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特別賞

震災復興特別賞

名取市図書館 どんぐり子ども図書室

杉本 洋文

(株式会社 計画・環境建築)

木質修景特別賞

伊香保温泉石段街 街並み景観デザイン改修

みぞぶち かずま、根来 直生、柳原 まどか

(オデッセイ オブ イスカ)


木質デザイン特別賞

JAISTギャラリー

松田 達、林野 紀子 (松田達建築設計事務所

+りんの設計一級建築士事務所)

木育活動特別賞

ぐるりん

Design Build Fukuoka

(FUCA)


木材活用特別賞

恵庭市黄金ふれあいセンター

北海道大学大学院工学研究院

都市地域デザイン学・瀬戸口研究室

株式会社 渡辺建築設計

木材活用特別賞

DKB48

川添 英司、持永 直樹、臼井 省司

(Team Home-Ran)

 


木材活用特別賞

北海道北斗市の家 地産地消の唐松集成材軸組住宅

高田 傑

(高田傑建築都市研究室)