日本木青連ネットワーク紹介 第3回

日本木青連の会員企業を「お仕事での連携」を絡めて紹介していくコーナー。

第3回目は石川県よりお届けします。

 

# 復興への響き〜能登ひばが紡ぐ地域サプライチェーンの物語

## フルタニランバーを中核とした川上から川下までの連携

 

1はじめに

 

令和6年1⽉1⽇に発⽣した能登半島地震は、⽯川県の⽊材業界に深刻な影響をもたらしました。製材⼯場の倒壊、⼭林の⼟砂崩れ、後継者不⾜の深刻化という危機的状況の中で、創業120年の歴史を持つフルタニランバー株式会社(⾦沢市、古⾕隆明社⻑)が展開する「ATENOTE(アテノオト)」は、地域材の新たな活⽤⽅法を⽰しています。また公益社団法⼈ ⽯川県⽊材産業振興協会の理事として、能登ひば⾼付加価値化プラットフォーム「ATE-NET」の開設に中⼼メンバーとして携わるなど、復興と持続可能な林業の実現に向けた希望の光となっています。

2フルタニランバーという企業

 

フルタニランバー株式会社は明治37年(1904年)、船⼤⼯として創業した⽼舗⽊材会社です。⽯川県⾦沢市に本社を構え、現在は5代⽬となる古⾕隆明社⻑のもと、従業員37名で国内外の⽊材を取り扱う総合⽊材商社として事業を展開しています。

同社の特徴は取扱樹種の豊富さにあります。アジア圏、北⽶、豪州、欧州など世界各国と直接取引を⾏い、全国でも随⼀の多品種多品⽬を扱っています。近年は環境問題への配慮から国産材の取扱いを増加させており、IoT技術やRFIDを活⽤した商品管理体制の構築、スマホアプリによる発注システムなど、アナログとデジタルを融合させた⾰新的な経営を⾏っています。

3震災の影響と挑戦

 

令和6年能登半島地震は、県内の林業・⽊材業界に深刻な被害をもたらしました。輪島市の鳳⾄⽊材はじめとする多くの製材所が倒壊し、機械の損傷、原⽊の散乱といった物理的被害が発⽣。さらに⼭間部では⼟砂崩れが多発し、林道が⼨断されて現場への到達すら困難な状況となりました。

能登森林組合によると、技能職員数は約100⼈から現在60⼈まで減少しており、震災による住⺠避難の⻑期化により、後継者不⾜がさらに加速することが懸念されています。

しかし、このような厳しい状況の中でも、フルタニランバーのATENOTE プロジェクトにより 、能登ひばの新たな価値創造を通じて地域復興に貢献する姿勢を⽰しています。

4ATENOTE プロジェクトの意義と全国展開への発展

 

「ATENOTE(アテノオト)」は、⾳楽⽤語の「note(⾳)」に樹種名の「アテ」を重ね命名された地域材活性化プロジェクトです。楽器メーカーと連携し、材料として能登ひばの活⽤を提案しその価値を共有することで、バイオリン、ギター、ベース、ウクレレ、和太⿎、三味線など多岐にわたる楽器が製作され、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正⽂さんやストレイテナーのホリエアツシさんといった著名なミュージシャンとのコラボレーションも実現しています。

写真左:ホリエアツシ

写真右:後藤正文

 

※ストレイテナー ホリエアツシさんと共に能登ヒバエレキギターを製作。2025年8⽉9⽇、終戦から80年を迎えた⻑崎で⾏われたライブイベントなどで活⽤されている。

 

※ASIAN KUNG-FU GENERATION後藤正⽂さんが静岡県藤枝市に建築している⾳楽スタジオの内装と本⼈⽤のエレキギターに能登ヒバと古材を活⽤している。

 

ATENOTE プロジェクトの成功により、需要の創出、さらには⼈材リクルートにも⼤きな効果を発揮しています。

 

特筆すべきは、BRAHMANのTOSHI-LOWさんが学⻑を務める「幡ヶ⾕再⽣⼤学」との連携です。古⾕社⻑は2024年9⽉に同⼤学の林業部⻑に就任し、震災直後のOAUライブ会場での出会いから始まった⽀援活動は、能登島避難所への物資⽀援、ビーチクリーン活動、New Acoustic Camp 2024での体験型⽊材教育の全国展開へと発展しています。

写真左:BRAHMANと組⼿什

写真中央:炊き出し活動

写真右:NewAcousticCamp出展

                       

5県内サプライチェーンの現状と展望

 

能登ひば⾼付加価値化プラットフォームの中核として2024年2⽉に開設された「ATENET」ポータルサイトでは、「アテ林業・能登ヒバを活かした能登の創造的復興サポーター」制度を運営し、⽯川県内に加えて全国から40を超える組織がサポーター登録を⾏っています。

 

古⾕社⻑は公益社団法⼈⽯川県⽊材産業振興協会の担当理事として、このプラットフォーム運営の中⼼的役割を担うとともに、⽇本⽊材⻘壮年団体連合会(⽇本⽊⻘連)において令和6年度常任理事、北信越地区⻑、復興委員会実質的委員⻑を兼務し、全国の⽊材業界ネットワークを活⽤した⽀援体制を構築しています。

ATE-NETフォーラムにて(2025年2⽉)

 

6まとめ〜持続可能な地域の森の循環の実現に向けて〜

 

フルタニランバーは単なる材料販売業者の枠を超え、⽯川県の森林資源と⼈々を結ぶ多⾯的な活動を展開しています。幡ヶ⾕再⽣⼤学林業部⻑としての全国的な⽊材教育推進、アーティストとの復興⽀援コラボレーション、⽇本⽊⻘連での復興委員会活動など、古⾕社⻑の多岐にわたる⼈的ネットワークが地域復興の原動⼒となっています。

 

従来建築材中⼼の⽤途から楽器材への⾼付加価値化により地域材の需要創出と林業の活性化を実現し、⾳楽という⽂化を通じて「⼈と⾃然をつなぐ」理念のもと持続可能な森林資源の利⽤を促進しています。「ATENOTE プロジェクト」は単なる商品開発を超え、能登の⾥⼭⽂化を次世代に継承し、「ATE-NET」は地域コミュニティの復興と持続的発展を⽀える重要な取り組みとなっているのです。

 

⽇本⽊⻘連の会員同⼠のサプライチェーンにおいても、このような創造的で持続可能なアプローチが、震災からの復興と業界の未来発展の鍵となることでしょう。

 

株式会社桑⽊ 森⽥ ⾂